
平安時代の貴族たちが、急にスケジュールをぜんぶキャンセルして家に引きこもる……そんな不可思議な習慣がありました。
それが「物忌み(ものいみ)」です。
ただのサボり?いやいや、とんでもない! これは陰陽道におけるとても大切な斎戒(さいかい)=けがれを避ける修行なんです。
このページでは、そんな物忌みの意味やルール、どんな時に行われたのかなどを、わかりやすくかみ砕いて解説していきます!
物忌みとは、陰陽道における「心身の清浄化」を目的に、ある一定期間、自宅に籠って生活を制限する習慣のこと。
要するに、
って感じです。具体的には……
この期間は、家の御簾(みす)や門、帽子(冠)などに「物忌」札をかかげて、「入っちゃダメだよ〜」とアピールしていました。
物忌みを始めるきっかけは、けっこう幅広いんです。
こんな時に、陰陽師が暦や星を読んで「●月●日から3日間、物忌みしましょう」と判断を下すんですね。
目的はズバリ、物の怪や厄災を避けること。災いに触れてしまう前に、生活を止めて運気の回復を図るという、危機管理型スピリチュアルなんです。
お祭りや神事の前にも、物忌みはよく行われました。その時の祭りの大きさによって、物忌みの期間も変わってきます。
たとえば天皇の即位儀式である大嘗祭では、祭りの前に「散斎(あらいみ)」として1ヶ月、そして祭当日は「致斎(まいみ)」として完全無言・禁欲の生活。もう修行僧ばりのストイックさです。
びっくりするかもしれませんが、平安時代の貴族にとって物忌みは日常茶飯事。一年のうち1ヶ月近くも籠っていた人もいたんです。
たとえば『源氏物語』では、主人公・光源氏が宮中から退出して物忌みする場面もあります。ちゃんと御簾に「物忌」札をかけて、人を寄せつけないようにしていたんですよ。
物忌みの風習は、明治時代に陰陽寮が廃止されたあとも、庶民の生活習慣にしっかり残っています。
たとえば……
見えない世界に対する慎重さ。まさに、物忌みの精神が生きている証ですね。
五行要約