陰陽五行説と社会階級|古代中国・日本の「階級」概念

陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)といえば、自然や人の体のバランスを説明する哲学…と思われがちですが、実はこの思想、社会のヒエラルキー=身分制度の“正当化”にも使われていたんです。

 

古代中国では、天と地、君主と民、男と女までもが「陽と陰」「木火土金水」のバランスで位置づけられ、その関係性に基づいて誰が上で、誰が下かを決めていたんですね。このページでは、そんな陰陽五行説がどのように階級社会を支えていたのか、中国と日本それぞれで見ていきましょう!

 

 

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陰陽五行は“秩序づけの思想”だった

陰陽五行説はもともと、自然界や人体のバランスを解釈するための理論。でも、古代中国ではそこから発展して「社会の秩序」=誰が支配し、誰が従うべきかという考え方にまで応用されました。

 

とくにポイントになるのが次のふたつ:

 

  • 陽尊陰卑(ようそんいんぴ):陽(天・男・支配者)が尊く、陰(地・女・被支配者)はそれに従うべきという思想。
  • 五行配当による上下関係:「中央=土=皇帝」「東=木=文官」「西=金=軍事」など、五行と方位によって役職や人の格を序列化。

 

つまり、「支配する側が偉いのは自然の理(ことわり)である」と、天文学・哲学の名を借りて階級を“科学的”に説明していたわけです。

 

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服の色で身分がわかる?五色と地位の関係

五行に対応する五色(青・赤・黄・白・黒)は、古代の官服・礼服・制服の色にも強く結びついていました。

 

  • 黄色(土)=皇帝の専用色。中央を象徴し、最も高貴な色。
  • 赤(火)=高官・三品以上の身分に限定。
  • 青(木)・白(金)=文官や庶民。
  • 黒(水)=兵士・警備など末端職の色。

 

こうした配色ルールは、身分を一目で視覚化し、「この人は高貴」「あの人は下層」と誰でもわかるようにしていました。

 

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官職制度にも陰陽五行の影響が

中国では、官僚制度の中に陰陽官・天文官・卜官といった“五行の専門家”が組み込まれていました。たとえば:

 

  • 陰陽官:暦・方位・祭祀を司り、政治判断の吉凶を決定。
  • 天文官:星や天象から国運を占う。
  • 欽天監(明代以降):国家公式の占星・天文観測機関。

 

こうした職は「儒・医・陰陽」の三学のひとつとされ、国家的にも認められた専門職であり、高い身分と権威が与えられていました。

 

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日本でも祭祀や律令制に組み込まれた

陰陽五行説は、飛鳥〜奈良時代にかけて日本へ伝来し、律令制度の一部として導入されました。

 

とくに重要なのが:

 

  • 陰陽寮:朝廷に設置された天文・暦・占術の専門機関。
  • 服色令:官人の位階に応じて着る服の色が五行対応で決まっていた。
  • 祭祀・遷都:大嘗祭や遷都のタイミングも五行の吉日・方位に従って実施。

 

また、民俗学者の吉野裕子によれば、日本の大規模儀式や神事は、原始信仰+陰陽五行の融合によって「階級的な儀礼構造」が形成されたとのこと。神を迎える行為自体が、貴族階級の正統性を象徴する行為だったんですね。

 

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五行は“可視化できる身分システム”だった

最後にまとめると、陰陽五行説は単なる自然理論ではなく、次のような社会的“操作道具”でもあったんです。

 

  • 法律:刑罰の軽重にも陰陽論が反映され、男=陽は責任重く、女=陰は軽減される例も。
  • 建築・方位:皇城や都の構造が五行・四神に沿って設計され、住民区画に格差がつけられた。
  • 祭祀と儀礼:位の高い者が行う祭祀には特定の色・道具・方位が定められ、庶民はそれをまねできない。

 

まさに、陰陽五行説は“自然の秩序”を装った社会制度の骨組みであり、階級を制度化・視覚化する役割を担っていたのです。

 

五行要約

 
  1. 陰陽五行説は自然と人間社会の秩序を説明する理論だった!
  2. 古代中国では陽尊陰卑を基に身分制度を正当化した!
  3. 五色服制によって階級が視覚化されていた!
  4. 日本でも陰陽寮・服色令・神事を通じて貴族と庶民が区別された!
  5. 五行は古代社会における身分差の象徴的コードとして機能していた!