
「安倍晴明って、クールでミステリアスな陰陽師!」――そんなイメージ、持ってる方も多いと思います。でも実は、彼がふと口にしたある一言に、その意外すぎる性格があらわれてるんですよ。
それが『今昔物語集』に出てくる、あの有名なセリフ。
「罪作りたまふ君かな」
このページではこの言葉を手がかりに、安倍晴明の“人となり”にぐっと近づいてみましょう。
この一言、現代語にすると「あなたたちは罪深いお方ですなぁ」って感じです。でも、ただの嫌味じゃありません。これは晴明が蛙を殺してみせてほしいと求めた貴族や僧侶たちに向かって、強く戒めた言葉。
彼らは好奇心で「お前の力、見せてみろよ」と迫ったわけですが、晴明はあえて術を使って蛙を殺した後、静かにこう言ったんです。
「この行為が罪になることをわかっていて、私にさせたのですか?」
――そんな皮肉と嘆きがこめられてるんですね。
普通だったら、「へへっ、これが俺の力だぜ!」って誇りたくなりそうな場面。でも晴明はそうしなかった。むしろ「その術を使うこと自体が罪になる」ってちゃんと理解していて、しかもその責任を引き受ける覚悟がある。
力の使い方に対して、ものすごく慎重だったんです。
つまり彼は、「術が使えるからって、それを試しに使うのは間違ってる」と考える、倫理観のしっかりした人物だったということ。
それだけじゃありません。このセリフには、相手を見抜く観察眼もにじんでます。
「術を試せなんて軽々しく言ってくるけど、それって本当に正しい態度なの? 自分ではやらず、私に罪を背負わせようとしてるのでは?」
――そういう他人の動機の裏まで読み取ってるんですよね。
表情を変えずにスパッと核心を突くタイプだったのかもしれません。
一方で、「罪作りたまふ君かな」って言い方、ちょっと古風で、どこか上品な皮肉交じりの冗談っぽさも感じませんか?
ガチギレじゃなくて、静かに苦笑いしながら釘を刺す――そんな大人の余裕もあったんじゃないかと思うと、ちょっと親しみがわいてきます。
この話の核心は、「蛙を殺す」っていう、たったそれだけのことに対して、晴明がどれだけ重たく受け止めていたかです。
「命は命。蛙だろうと人だろうと、殺すことには違いない」
――そんな思いがにじむ態度こそ、彼の本質なのかもしれません。
強さに裏打ちされた、優しさと慎み。
それが安倍晴明の“本当の姿”なんです。
五行要約