
鵺――それは、平安京を震え上がらせた奇怪な魔物。その鳴き声は不吉を告げ、帝の枕元に現れて悪夢をもたらしたといいます。
この鵺の退治で名を上げたのが源頼政。でも、その背後には、ひそかに陰陽師・安倍晴明の霊視と式神術があったという説もあるんです。鵺のような得体の知れない妖怪に対抗するには、武だけじゃ足りない。そこに必要なのが、呪術と霊力のプロ――陰陽師の存在だったんですね。
このページでは、晴明と鵺の不思議な関係、そして陰陽道が妖怪伝承に果たした役割を、伝説と史料の間をたどりながら、わかりやすくかみ砕いて解説します。
鵺(ぬえ)は『平家物語』にも登場する伝説の魔物で、見た目はかなりグロテスク。猿の顔、狸の胴体、虎の手足、そして蛇の尻尾という、まるでパーツをつぎはぎしたような姿なんです。
夜な夜な「ひょ〜、ひょ〜」と鳴いては不吉を呼び、清涼殿に現れて天皇の健康を蝕むとされました。これに立ち向かったのが、弓の名手源頼政。名刀獅子王と弓で鵺を退治し、宮廷に平穏を取り戻した…というのが有名なエピソードですね。
でもその裏には、もうひとつの物語があります。実は、鵺が現れる前に異変の兆候を察知したのが安倍晴明だったとも言われているんです。
『今昔物語』や『宇治拾遺物語』には、晴明が天文観測や霊視によって宮中に潜む妖異を察知し、頼政にその存在を知らせたという記述が。つまり、武のヒーロー・頼政の陰には、術の守護者・晴明がいたというわけなんですね。
鵺のような強力な妖怪に対しては、晴明は式神――とくに十二天将と呼ばれる霊獣たち――を召喚して対抗していたとされます。
陰陽道では、妖怪を直接打ち倒すというよりも、その動きを封じたり、呪詛の根を断つというアプローチをとることが多いんです。鵺もまた、表面上は頼政が退治したけど、背後で晴明が封印術を張っていたという説も根強く残っているんですよ。
この鵺退治のエピソードでは、「力」と「術」が見事にバランスしているのが面白いところ。
頼政が弓矢で仕留める一方、晴明が術で導き、鵺の気配や兆候を事前に読み取る――陰陽師と武士の共闘という構図が見えてきます。これによって、陰陽師は「陰で支える者」として、単なる魔術師以上の社会的役割を持つことになったんです。
『平家物語』をきっかけに、この鵺退治の話は広く語り継がれ、のちの説話・講談・絵巻物にも取り上げられました。
そして現代でも、『鵺の陰陽師』といった漫画作品やゲームで、「晴明 vs 鵺」の構図は人気のあるテーマ。妖怪退治モノの原型とも言えるこの伝承は、陰陽道がいかに妖怪文化と深く結びついているかを示す象徴でもあります。
五行要約