
安倍晴明といえば、占術や呪詛返しで知られる一方で、もうひとつ見逃せないのが結界術。これは、いわば“目に見えないバリア”を張るような術で、妖怪・怨霊・災厄を近づけさせない防衛技術です。特に晴明はこの術を高度に発展させ、「魔法陣」と呼ばれる図形を用いた神聖な結界構築を確立したと言われています。
まず結界とは何かというと、神聖な領域と俗界を分ける“見えない壁”のようなもの。陰陽道では、結界を張ることで神霊や式神を封じたり、外敵を遮断したりします。
平安京そのものも、陰陽師たちによって都市スケールの結界で守られていたとされ、安倍晴明はその最前線に立っていた陰陽師でした。人だけでなく、都市や神社、さらには特定の時間帯にまで結界を張っていたというから驚きです。
結界術の中心にあるのが法陣=魔法陣。これは地面や空間に図形を描いて霊的な力の流れを制御・増幅する装置のようなもの。晴明がよく使ったとされるのが以下の図形です。
こうした図形の中に式神や神霊を定位置に配置して封印・防御するというのが晴明流。とくに十二天将や四神(玄武・青龍・朱雀・白虎)を陣に配すことで、結界の硬度や作用範囲が増すとされていました。
晴明の結界術は、ただ魔除けにとどまらず、いろんな用途に応用されていたようです。
平安京には東西南北に方除けの神社を配置し、鬼門・裏鬼門に神霊を祀って防衛網を構築。晴明が中心人物として配置に関わったとも言われています。
晴明神社では、いまでも厄除桃や五芒星の護符などが授与されており、これは彼の術がいまも生きている証。
現代伝承では、晴明が無人の家屋を式神で制御しつつ、家の四隅に結界を張って霊障を防いでいたとも語られています。
もともと結界術は「悪しきものを入れない」ための守りの術でしたが、晴明の手にかかるとそれだけでは終わりません。彼は結界の中に式神を配置して、霊的バリアを武器化するという新しい使い方を確立しました。
たとえば封印対象の霊が逃げ出そうとしたとき、その結界が呪符や言霊と連動して爆発的に作用し、相手を霊的に圧殺する仕組みに変化するという発想。このように、晴明の結界は動的・攻防一体の術へと進化していたのです。
京都の晴明神社を訪れると、五芒星が刻まれた石柱やお守りがたくさん見られます。これらはすべて、晴明が構築した結界術の名残。
また、「結界」という言葉自体がアニメやゲーム、漫画の中でよく登場するのも、晴明の影響によるものだといっても過言ではありません。
五行要約