
晴明が使役した十二天将の代表格「四神」
内丹修養における四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)を統合し、生理的エネルギーの調和を表現した図
出典:尹真人 / Public domainより
式神とは、陰陽師が使役した「霊的な存在」のことで、陰陽師の命令で自在に動き、人の悪行や善行を見定めるといわれています。この式神には様々な種類があり、各陰陽師が自分の特性にあった式神を使役していました。
まず式神は見た目でも作られ方でも分類ができます。
一番よく知られているのはやっぱり擬人式神ですね。札や人形に術をかけて召喚!ってやつです。
ここでは陰陽道の歴史や伝承に登場する有名な式神を紹介します!陰陽師が召喚・使役する存在として、守護・戦闘・偵察などその役割はさまざまです。
十二天将の代表格「四神」のイラスト
東(青龍)、南(朱雀)、西(白虎)、北(玄武)
出典:RootOfAllLight / CCBY-SA4.0より
安倍晴明が使ったとされる最強の式神群。青龍・朱雀・白虎・玄武など四神を含み、天后・貴人・勾陳・天空など十二体で構成されます。それぞれが方角や五行、季節、時間帯を司り、式盤における重要な守護神とされました。
北斎漫画より「役小角(えん の おづぬ)と前鬼・後鬼」
葛飾北斎が1819年(文政2年)に描いた『北斎漫画』収録の木版画。修験道の祖・役小角と式神の前鬼・後鬼が描かれている
出典:Katsushika Hokusai / Public Domain (Japan)より
修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)が使役したとされる夫婦の鬼。かつては悪しき存在だったが、改心して従者となり、常に左右に仕えて陰陽師の警護や結界の守りを担う存在に。奈良の吉野山では今も伝承が息づいています。
化物之絵より「犬神(Inugami)」
江戸時代初期(18世紀頃)の絵巻「化物之絵」に描かれた犬神の一場面。妖怪図譜としても価値が高い
出典:Brigham Young University / CCBY-SA4.0より
犬の霊を憑依・使役する式神で、地方によっては一族に代々伝わる“家付き神”と見なされることも。匂いを辿る力に優れ、追跡・監視・呪殺などを担いますが、制御に失敗すれば祟りを招くため、扱いは慎重を要します。
虫や小動物を同じ器で戦わせ、最後に残った一匹の怨念を凝縮させて式神とする、呪詛系の禁術。強烈な呪いの力を持つ一方、術者にも跳ね返る危険があり、術式は厳重な封印と結界のもとで行われます。古代中国から伝わったとされます。
神武天皇と八咫烏の図(安達吟光, 1891年)
東征の際、三本足の神鳥・八咫烏(やたがらす)に導かれる神武天皇を描いた木版画。後の陰陽師が式神を使役する伝統と通ずる「導き手」の象徴的描写
出典:安達吟光 / Public Domainより
欧州の魔女の使い魔にも通じる存在で、陰陽師にとっては“目”としての役割を果たします。カラスは空からの偵察、黒猫は人間社会に紛れての伝言や監視に活用され、式神の中では比較的身近な存在として親しまれてきました。
十二神将や前鬼・後鬼のような式神は、信仰や伝承にも深く関わっていて、単なる「召喚獣」ではないんですよ。
『愛のポーション』(Evelyn De Morgan, 1903年)
魔女が真剣に恋の魔力を込めたポーションを注ぐ様子。傍らには〈使い魔〉としての〈黒猫〉が描かれている。
出典:Evelyn De Morgan / Public Domainより
式神は日本だけじゃなく、世界各地に類似した「使い魔(familiar)」の概念があります。
この辺りの共通性を見ていくと、式神ってけっこう国際的な存在なんだなって感じがしてきますよね。
使い魔や式神には、その用途や依り代によってさらにバリエーションがあります。
陰陽師の力量と性格によって、使う式神の種類や系統も違っていたようです。まさに「使いこなす力」が問われたんですね。
最後にちょっと現実的なお話をすると――式神の存在は物理的には証明されていません。
でも、当時の人々にとって式神は「見えないけど確かにいる」と信じられていた存在。災厄や異変を説明したり、祈祷の成果を実感する象徴的な存在だったんです。
密教でいう護法童子とも似た性格があり、儀式や宗教文化の中で重要な位置を占めていたのは間違いありません。
五行要約