

式神とは、陰陽師が使役する霊的な存在のことを指します。命令によって自在に動き、人の善悪を見極めたり、災厄から守ったりと、さまざまな役割を担ったとされています。
この式神には実に多くの種類があり、見た目も能力もバラバラ。紙札や人形、小動物の霊を依り代にしたものもいれば、術者の「気」や「念」から生まれるものまであります。
どんな式神を使うかは、その陰陽師の力や性格によってまったく違ったんです。まさに式神は、その人を映すもうひとりの「影」ともいえる存在だったんですね。以下で詳しく解説していきます。
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安倍晴明(921 - 1005)が式神を使役する場面(泣不動縁起)
陰陽師が式神を従えて疫神を退ける図。術者の祈祷と式神の働きで災厄を祓う場面を描く。
出典:『Nakifudo Engi Abe no Seimei』-Photo by Unknown/Wikimedia Commons Public domain
まず式神は見た目でも作られ方でも分類ができます。
中でも擬人式神は、紙や藁などの依り代に霊を宿らせるタイプなので、見た目もわかりやすくて親しみやすいんですよね。よくある「札に術をかけて召喚!」みたいなイメージは、まさにこの擬人式神の系統です。
それに対して、思業式神は、術者の「思い」や「気」から生まれるので、けっこう抽象的。姿も自由自在で、術者の気分や精神状態がけっこう反映されるんだとか。
つまり式神って、陰陽師の内面や力をそのままカタチにした存在とも言えるんです。
ここでは陰陽道の歴史や伝承に登場する有名な式神を紹介!
陰陽師が召喚・使役する存在として、守護・戦闘・偵察などその役割はさまざまです。

十二天将の代表格「四神」
内丹修養における四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)を統合し、生理的エネルギーの調和を表現した図
出典:尹真人 / Public domainより
安倍晴明が使ったとされる最強の式神群。青龍・朱雀・白虎・玄武など四神を含み、天后・貴人・勾陳・天空など十二体で構成されます。それぞれが方角や五行、季節、時間帯を司り、式盤における重要な守護神とされました。

北斎漫画より「役小角(えん の おづぬ)と前鬼・後鬼」
葛飾北斎が1819年(文政2年)に描いた『北斎漫画』収録の木版画。修験道の祖・役小角と式神の前鬼・後鬼が描かれている
出典:Katsushika Hokusai / Public Domain (Japan)より
修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)が使役したとされる夫婦の鬼。かつては悪しき存在だったが、改心して従者となり、常に左右に仕えて陰陽師の警護や結界の守りを担う存在に。奈良の吉野山では今も伝承が息づいています。

化物之絵より「犬神(Inugami)」
江戸時代初期(18世紀頃)の絵巻「化物之絵」に描かれた犬神の一場面。妖怪図譜としても価値が高い
出典:Brigham Young University / CCBY-SA4.0より
犬神は、犬の霊を憑依・使役する式神で、地方によっては一族に代々伝わる“家付き神”と見なされることも。匂いを辿る力に優れ、追跡・監視・呪殺などを担いますが、制御に失敗すれば祟りを招くため、扱いは慎重を要します。

虫や小動物を同じ器で戦わせ、最後に残った一匹の怨念を凝縮させて式神とする、呪詛系の禁術。強烈な呪いの力を持つ一方、術者にも跳ね返る危険があり、術式は厳重な封印と結界のもとで行われます。古代中国から伝わったとされます。

神武天皇と八咫烏の図(安達吟光, 1891年)
東征の際、三本足の神鳥・八咫烏(やたがらす)に導かれる神武天皇を描いた木版画。後の陰陽師が式神を使役する伝統と通ずる「導き手」の象徴的描写
出典:安達吟光 / Public Domainより
欧州の魔女の「使い魔」にも通じる存在で、陰陽師にとっては“目”としての役割を果たします。
──等々に活用され、式神の中では比較的身近な存在として親しまれてきました。
式神は、陰陽道の思想体系や伝承にも深く関わっていて、単なる「召喚獣」ではなかった!😲というポイントを抑えておきましょう!

『愛のポーション』(Evelyn De Morgan, 1903年)
魔女が真剣に恋の魔力を込めたポーションを注ぐ様子。傍らには〈使い魔〉としての〈黒猫〉が描かれている。
出典:Evelyn De Morgan / Public Domainより
式神は日本だけじゃなく、世界各地に類似した「使い魔(familiar)」の概念があります。
この辺りの共通性を見ていくと、式神ってけっこう国際的な存在なんだなって感じがしてきますよね。
使い魔や式神には、その用途や依り代によってさらにバリエーションがあります。
こうした式神のタイプは、使う側──つまり陰陽師の個性によっても選び方が変わってきたようです。たとえば几帳面な陰陽師なら紙札型で整理整頓を任せたり、野性的なタイプなら狐や狸の霊と相性が良かったり。
式神選びにも「相性」と「目的」が大事だった、というわけです。
だからこそ、どんな式神を使っていたかで、その陰陽師の人物像まで見えてくるんですね。
最後にちょっと現実的なお話をすると──式神の「実在」は、科学的・物理的には確認されていないのが事実です。
とはいえ、平安時代の人々にとって式神は、「見えないけど確かにいる」と心から信じられていた存在でした。たとえば突然の病や天災、説明できない不運などに対して、「式神が知らせてくれた」「式神が守ってくれた」という解釈がなされることも多かったんです。
つまり式神は、異変や災いに意味を与え、祈りをかたちにするための象徴的な存在だったんですね。
また、密教でいう護法童子のように、術者を守る霊的な従者として扱われる点でもよく似ています。どちらも目に見えないけれど、祈りの世界では確かに「共にいる」と実感されていた──そんな立ち位置だったのでしょう。
「術のための道具」ではなく、「共に在る者」として大切にされていたのです。
五行要約
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