
妖怪退治の名将・源頼光と、呪術と天文のスペシャリスト・安倍晴明。このふたりがコンビを組めば、鬼たちもたじたじ…なんて想像すると、ワクワクしませんか?
実際、民間伝承や創作ではこのふたりが「最強のバディ」として活躍する場面がいくつも描かれています。でも、ちょっと冷静に見てみると──史実の上ではあんまり接点がなかったみたいなんですね。
このページでは、「安倍晴明と源頼光の関係」について、事実と伝説を行き来しながら、詳しく紹介していきます。
平安京の都で、貴族の娘たちが次々に鬼にさらわれるという大事件が発生。これに対し、安倍晴明が占術を駆使して「大江山に棲む酒呑童子の仕業だ」と断定した──というのが有名な酒呑童子伝説です。
そしてその情報を受けて討伐に向かったのが、源頼光※とその配下の四天王たち。ここでは、
として連携したような描かれ方をされるんですね。
※源頼光(みなもとのよりみつ)
平安時代中期の武将で、清和源氏の祖・源経基の子。大江山の酒呑童子退治や土蜘蛛退治などの伝説で知られ、頼光四天王を率いた武勇の人物として語られる。実在の武士としても摂関家に仕え、武門の名を高めた存在。
頼光四天王のひとり、渡辺綱※が鬼女の腕を斬り落とす逸話がありますが、その腕が後日、綱のもとに戻ってこようとする──という怪異が発生。
このとき、安倍晴明が呪術によって鬼の腕を封じる術を伝えた、という伝承も残されています。ここでも
という役割分担が見られますね。
※渡辺綱(わたなべのつな)
平安時代中期の武将で、源頼光の四天王の一人。鬼女・茨木童子の腕を切り落とした逸話で有名。頼光に仕えて多くの妖怪退治伝説に登場し、勇猛さと忠義を象徴する人物として後世に語り継がれた。渡辺氏の祖ともされる。
源頼光が病床で苦しんでいたとき、突如として現れた異形の存在──それが土蜘蛛※という妖怪でした。刀で斬り伏せるものの、逃げられてしまい、その後、仲間とともに追い詰め討伐します。
このエピソードにも晴明が陰で関与していたという伝承があり、「病因を見抜いた」だとか「霊的な助言をした」といった話がセットで語られることがあります。
※土蜘蛛(つちぐも)
日本の古代伝承に登場する異形の存在で、朝廷に従わぬ土着勢力を象徴する妖怪。源頼光が退治したとされる伝説が有名。蜘蛛のような姿で描かれ、巨大な体や妖術を使う設定も多く、反乱者や異民族の寓意とされることもある。
ただし、史実の話になるとこのふたり、直接的な関係を示す一次資料は存在しません。安倍晴明は921年生まれ、源頼光は948年生まれで、年代はかぶっているんですが、晴明の公的記録や日記には頼光の名前が出てこないんです。
それでもふたりの役割──「都の治安を守るヒーロー」として──が共通していたため、後世の人々が「このふたりが組んでたら最高だったはず」と想像を膨らませたわけですね。
『今昔物語集』や『御伽草子』など中世の説話集では、陰陽師と武士が共に怪異に立ち向かうという構図が定番化していました。
晴明と頼光はその代表格。いわば「呪術と剣のダブルヒーロー」として、日本の物語文化に定着していったんです。
例え史実でなくとも、人々の心に刻まれた“理想のコンビ像”として語り継がれてきました。剣で妖を斬る頼光、呪で封じる晴明──この組み合わせは、超常と現実、武力と知略の融合を象徴しており、のちの創作作品にも多大な影響を与え続けているのです。
五行要約