
「安倍晴明」の名前を聞くと、まず思い浮かぶのは、呪術や式神、星マークなどなど・・・でも実は、彼のすごさを支えたのは「人とのつながり」だったんです。師匠との出会い、友との交流、時の権力者との信頼関係、さらには狐の母という異色の家族設定まで──。
彼の周りにいた人びとの存在が、安倍晴明という半ば神格化された“超人”をかたちづくっていったんです。
このページでは、「安倍晴明の人間関係」について、師弟・友情・政界との関係・家族・式神に至るまで、いろんな角度からわかりやすくかみ砕いて解説します。
賀茂忠行は陰陽寮の天文・占術のエキスパート。彼が晴明の才能を見抜いて育てたからこそ、のちの名声があったとも言われてます。あの有名な話──夜道で鬼を察知した晴明に感心して、全ての奥義を授けたというエピソードも彼とのものです。
その息子賀茂保憲とも、いわば「兄弟弟子」のような関係でした。ふたりは時に競い、時に協力しながら宮中の暦や天文を担っていきました。この賀茂家との関係は、学問上のライバルでありつつも、師弟の絆に近い深い結びつきがあったんです。
安倍晴明といえば式神。これは単なる召使いや使い魔ではなく、霊的な“家族”のような存在でした。たとえば、よく知られる前鬼・後鬼は、晴明の命令で屋敷の掃除から情報収集までこなす万能型の式神コンビです。
また、十二天将という強力な守護霊たちも従えており、陰陽師としての儀式や呪術には欠かせないパートナーでした。これら式神との関係が、晴明の“霊力”を支えていたともいえるでしょう。
不動利益縁起絵巻の一場面
園城寺(三井寺)の縁起『不動利益縁起』絵巻から、安倍晴明が式神2匹を従え、病身身代わりの祈祷を行う中盤の場面
出典: Wikimedia Commons public domainより
晴明は単なる呪術者ではありません。彼は花山天皇や一条天皇、そして藤原道長といった当時のトップクラスの貴族や天皇から絶大な信頼を受けていました。
とくに、宮廷儀礼や国の暦づくりに関わる陰陽寮での仕事は、政権の安定や災厄の回避に直結する重要ポジション。晴明はその中核にいたわけで、陰陽師としてだけでなく、政治ブレーン的な存在だったともいえます。
藤原道長
平安時代を代表する摂政。安倍晴明を相談役として重宝していた。
出典:作者不詳 / Wikimedia Commons パブリックドメインより
晴明の“異能”のルーツとして語られるのが、狐の母・葛葉伝説。人間の父安倍益材と、狐の姿を取る霊的存在との間に生まれた子──という設定は、伝承や物語にたびたび登場します。
この話、もちろん史実じゃないけれど、「なぜ晴明だけがあんなにスゴかったのか?」っていう疑問に、昔の人がロマンチックな答えを見出した形ですね。
葛の葉狐伝説を描いた絵画
法師陰陽師として知られる安倍泰名ゆかりの物語で、六トウに由来する智略を伝える陰陽師・安倍晴明の母とされる狐女・葛の葉が、自らの正体を明かし子を残して去る瞬間を描く
出典:月岡芳年 / Wikipedia Commons パブリックドメインより
こちらは完全に創作ではありますが、夢枕獏の小説『陰陽師』の影響で、雅楽※の名手・源博雅(みなもとのひろまさ)のパートナーというイメージも定着してますね。
※雅楽(ががく)
古代から伝わる日本の宮廷音楽で、中国や朝鮮から伝来した楽曲と、日本古来の歌舞が融合した伝統芸能。平安時代に体系化され、宮中の儀式や神事で演奏される。笙・篳篥・龍笛などの管楽器を中心に構成され、厳かな旋律が特徴。
琵琶を奏で、妖怪退治に同行し、晴明と共に数々の怪異に立ち向かう──実際にそんな史実は確認されてはいませんが、二人の絆は、まるで陰と陽のように補い合う関係として描かれ、多くの読者の心を掴んできました。
学識と霊力に優れた晴明と、人間味と芸術性を備えた博雅。フィクションだからこそ際立つこのバランス感が、物語に深みを与えているのです。
五行要約